質問
医師が、薬剤を処方するに際し、薬剤師の意見を参考にして患者に飲み薬を処方したところ、飲み薬を飲んだ患者に健康被害が生じてしまいました。飲み薬の処方につき、用量を誤り、薬を過量に処方してしまった場合、誰が責任を負うことになるのでしょうか。
薬剤師がどのような回答をしたかによって、誰が責任を負うことになるかが変わってきますので、以下、場合分けをして述べていきます。
① 一般的な薬剤の用法・用量について回答を述べただけの場合
医師から一般的な用法・用量についての質問があり、薬剤師が一般的な回答をしたところ、医師が当該患者の特殊事情を考慮せず、漫然と薬剤師の回答に従い、不適切な処方を行った場合には、医師のみが不法行為責任を負うことになります。
医師は、医師法22条により、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、処方せんを交付しなければならないとなっております。
そして、処方せんは、当該患者に適合するものでなければならないとされており、不注意により誤った処方せんを交付した場合には、医師は上述のとおり、不法行為責任を負うことになります。
② 具体的な患者の症状を踏まえて、用法・用量について回答を述べた場合
薬剤師は、医師に対し、薬剤の専門家として、薬品に対する正確な情報を提供しなければならない注意義務を負っております。したがって、具体的な患者の症状を踏まえて、薬剤師が医師に回答を述べる場合、薬剤師は、患者の症状を踏まえた正確な情報を医師に伝える義務がありますので、不注意により、誤った情報を医師に伝えてしまった場合には、薬剤師は不法行為責任を負うことになります。
また、前述したとおり、医師は、当該患者に適合する処方せんを交付する義務を負っておりますので、たとえ薬剤師の回答を参考にしたとしても、漫然と薬剤師の回答に従い、不適切な処方を行った場合には、医師も不法行為責任を負うことになります。